2012/02/21

留学総括(その2)

留学総括の続き。(その1はこちら


AfDBでインターンしていた頃チュニジアにて。


インターン
インターンについてはまず第一に、探すこと自体に意味があったのだと、今考えれば思う。いわゆる就職活動のようなことをフランスで行ったので、CVやLettre de motivation(カバーレター)の書き方から、面接対策まで学ぶことができた。そして何より勉強になったことは、正攻法では全くダメで(返信すら来ない)、コネなり裏技なりを使わないと難しいということ。教授や授業に来てる講師に頼んで面接まで行かせてもらった企業はいくつかあったけど、(AfDBを除いて)正攻法で書類審査を通過したところは一つもなかった。とはいえ、特にコネがあったわけではないAfDBにインターンとしてとってもらえたのはかなりラッキーだった。

AfDBでのインターンは、お手伝いだったということもあり、技術的に難しいということはなかったけど、実際のプロジェクトマネジメント・意思決定・援助に関する交渉がどのように行われているかを知ることができ、そこに内在する問題にも少し触れられた。


学位について
このプログラムの売りはなんといっても、東大・ENPCの双方に正規課程で在籍して双方の学位をもらえること。問題なくいけば、東大は修士、ENPCはエンジニアリング学位(修士相当)がもらえる。

でも実は、最近は学位をもらうということにどれくらい意味があるんだろうか?と思うことが多くなってきた。てかむしろ、今となって振り返れば、学位そのものよりも、学位を取るための課程であったということが結果的にかなり良かったと思う。
つまり、

1.学位という明確な最低限の目標(あくまで最低限。当然学位がゴールではない)
2.正規課程に在籍しているので、不当な扱いを受けない
3.強制的に授業を網羅的に受けさせられ、インターンも必修
4.私のもらっていた奨学金の受給要件を満たせる(聴講生は不可)

これらの点が良かったと思う。実際、学位がこの先どう評価されるのかはOn verra.(そのうちわかるだろうから、その時に見てみよう)


野球
フランスでは野球のクラブチームに所属していた(以前の記事とそのコメント欄を見てちょ!)。
野球をやったことによって、グランゼコールに来てるような一部の特殊なフランス人ではないフランス人や(主に南米系の)移民の人たちと知り合えたのは、自分の中のフランス人像を矯正してくれたかなと思う。あと、コーチがアメリカ人ということもあって、なんだかアメリカ流な野球の取り組み方を知れて、興味深かった。


友人作り
この先も長い付き合いになりそうな友達はそれなりにできたんだけど、今考えれば(特に寮に住んでいたときに)もっと学校の飲み会に参加したり、もっとたくさんパーティーを開いたりして、もっと交流の機会をもてたよなぁと思う。まぁ実際問題振り返ってみると、復習・宿題・疲れはけっこうあったから、あれでもよくやった方とも取れなくないけど、ブラジル人やスペイン人のようにもっとうまくメリハリつけれたと思う。

あと、その仲の良い友人の多くが外国人(スペイン人・中国人・イギリス人・イタリア人etc.)で、周りにいた人数を鑑みると一緒に飲みに行ったりするレベルのフランス人の割合はさほど多くなかった。これはやはり、自分がフランス人コミュニティに食い込んでいく力のなさだと思う。

とはいえ、この留学でできたいろんな国の友達を今後とも大事にしていきたい。


いつも少数派であるということ
この点は、前回の記事でも書いた。でも、敢えてもっと感情ベースで素直に言うと、少数派ってこんなに辛いんだと思った。そして、そういう辛さって自分はこれまであんまり味わってこなかったなぁと。これは、自分の日常の立ち居振る舞いベースにも影響するテーマであると同時に、大多数の利益の方がごく少数の不利益より大きかったらそれは良いとしがちな経済学的なものの見方(当然一概にはそれが経済学的な見方とは言いませんが)にも一石を投じるテーマであるので、この率直な感想を心にとめておきたいと思う。


自分・生き方
なんだか、フランスの個人主義というか、それぞれが我が道を行くのを目の当たりにして、あんまり周りにどう思われるかとか気にしすぎず、自分の信じてることをやっていく生き方ってのを模索していこうかなと思った。当然、人に迷惑をかけちゃいけないし、フランスで「もっと他人のこと考えて行動しろよ」って思うことは多々あって、そういうのは真似すべきじゃないと思う。でも、なんていうか、こうしたら他人にすごいって思ってもらえるかな?的な発想がほとんどない点は見習いたいなって思う。正直に言えば、周りにどう思われるかって自分は気にし過ぎなんだと思う。でも、自分は自分の価値観を持てばいい、そんなの当たり前だし、表面的な他人の評価なんてどうでもいい。そういう足かせを外して、夢に向かって大胆な生き方をしていきたいと思った(超抽象的やけどw)。そしてそういう生き方はきっと、しんどくて刺激的で楽しいんだろーなー!!


最後に
いつも、普通に学部で就職した場合より3年遅れるんだということを自分に言い聞かせながらやってきた。正直、3年分の機会費用に見合うだけ勉強をし、悩み、友好関係や視野を広げられたんだと言って自分を納得させる自信がない。でもまだ3年目の最後の1年がある。この自信のなさを糧に最後の東大での1年を頑張ろうと思う。

あと、留学生活やってこれたのは、いろんな角度から支えてくれたみなさんのおかげです、これはマジで。
一番は家族に感謝。ことあるごとに気にかけてくれたし、何か必要なものがあったらすぐ送ってくれたし、郵便物をスキャンして送ってもらったりもした。
あと、日本にいる友達ね。(特に始めの方)くじけそうになったときでも、「まぁうまく行かなくても日本には居場所あるよ」っていう安心感はなんだかすごく精神的な支えになった。これは本当に大きかった。
あと、当然だけど、こっちの友達(日本人・フランス人・外国人問わず)にも本当に感謝。一緒に遊んだり・飲んだり、愚痴を聞いてもらったり、励ましあったり、情報共有したり。

最後の最後に・・・留学も終わりかけになって少し落ち着いてきてふと省みてみると、いつも支えてもらってばかりなのに、そのことに見向きもせずに自分のことばかり考えている自分がいたので、今後は支えてくれる人に少しずつ恩返しできるような生き方をしていきたいと思います。

以上!

2012/02/20

留学総括(その1)

約2年にわたるフランス留学生活ももう終わり。そこで、得たこと・感じたことの総括を書こうと思う。


ENPCの入り口にて。



海外である程度やってけるという自信
英語も仏語もまだまだやけれども、海外でやっていけるという自信はある程度ついたと思う。はじめの頃は、異文化・異言語の人たちに混ざって物事を進めていくということに不安があったけど、今はだいぶなくなってきた。ただもっと言えば、特別何か自信がついたというよりも、留学生活やAfDBでのインターンなどを通して、海外でやっていくことのイメージがついてきて、漠然とした不安がなくなったということかもしれない。どちらにせよ、これは自分の将来の選択肢を広げるという点では良かったと思う。


日本人としてのアイデンティティ
海外に滞在する人の多くがこれを感じると思うけど、俺もその一人。主にフランスをはじめとする、自分と異なる価値観・文化に触れて、自分の軸足が日本にあるんだと強く感じた。そして、世界の中の日本の役割というものを強く意識するようになった。自分個人としては、今後日本がどのような社会を創っていくかは国際社会に大きな影響を与えると思うし、そんな新しい日本社会のモデルを模索するために貢献していきたいと強く思うようになった。

それから、自分が日本について知らなさすぎるとも痛感した。日本のことについて聞かれて、答えられないこともいっぱいあった。日本に帰ったら、日本のことを勉強しなおすと同時に、国内のいろいろなところへ旅行したい!


比較対象のひとつとしてのフランス
日本とも英米とも違うというフランスの社会や考え方を知れたのはよかったなと思う。自分の中では、ポスト先進国型社会のモデルはヨーロッパにあるかも?という漠然とした期待をもってフランスに来たし、必然的に授業でもフランスのことを勉強するので、フランス社会を多少なりとも知ることができた。とはいえ(かなり乱暴な議論だと思うけど)もはや、日本が目指すべき社会モデルがフランスにあるだなんて毛頭思ってないけど、フランス社会を勉強することで、例えば、働くことの意義や、移民受け入れや、労働生産性の議論などについての一つの見方が得られたのは間違いないと思う。


経済について
経済が好きになった。こんな書き方をしたら、「お前は効用とか社会的厚生関数で人の幸せが測れるとでも思ってるんか!」とか言われそうだけど、そういう意味じゃない。僕は人間が経済合理的に行動するとは思わないし、この価値観が多様化した社会でそういう傾向はもっと強くなっていくと思ってる。そういう話ではなくて、単純に経済って言うものを勉強することが楽しいし、もっと知りたいって思えるようになった。専門書でも新書でも考えながら楽しく読めるし、議論するのも楽しい。なんていうか、野球に取り組んでるときのような感覚みたいな感じかな?たぶんこれは、経済に関する体系的な基礎がついたからなんだと思う。来る前までは、開発経済学と空間経済学を研究室で勉強した程度だったから、かなり偏ってたもんなぁ。

そいで、それの何が成果かっていうと、自分の描いてるものに対するアプローチとして経済っていう切り口でやっていきたいと素直に心から思えるようになったってこと。


経済学(学問として)
講義のレベル的には修士相当の割には特別高いわけではなくて、学部上級と修士の間くらいな気がする。ただ、それなりのレベルで、かなり網羅的にやったというのが良い点。「××経済学」と言われるものはほとんどやったし、金融・会計・経営・持続可能な開発(環境)・交通etcといった分野もだいぶカバーしたと思う。やはり、理系のグランゼコール、つまり大学レベルの数学の受験競争に勝ってきた生徒を対象としている分、数学的説明をはしょれる分だけ講義が進みやすいんだろう。あと、そもそもグランゼコールは(研究者育成ではなく)実務者育成を目的としてることから、難解で高度な理論を扱うというよりは、実務で使えるような学問的背景と論点を体系的におさえておくことに主眼が置かれてるんだろう。

とはいえ、強いて言うなら、マクロの上級をほとんどやらなかったところ(動学マクロとかもうちょっとちゃんとやりたかった)と、開発学みたいな授業がほとんどなかったのが個人的には残念。なので、より高度な経済・金融理論については、東大で授業を取ろうと思う。


語学
フランス語については、おそらくそれなりに伸びたんだと思う。目標にしてたDALF C1を受かったという点では合格点かな。フランス人の中に混ざって一緒にグループワークとかやったりして、時にみんなの言ってることがわかんなかったり、自分が喋っても「お前何言ってんのかわかんね」的な感じの惨めな思いをしたりして、悩んで勉強して・・・という繰り返しが、今考えれば一番自分のフランス語を伸ばしてくれたと思う。そういう意味では留学生の少ない専攻でよかったと思う。

ただ、いまだに小手先のテクニックで話してる感がある。ちょっとでも専門外の話をしたり、ホントにくだらない話をリラックスして話したり、フランス人の議論に混ざってついていったり・・・ってのは、まだまだできない。

英語については、もっと勉強できたかなぁとも思う。やっぱり、英語が喋れるという上で仏語もイケるというのが自分のあるべき姿やと思うし。とはいえ、ラッキーなことにAfDBのインターンのボスが仏語話者ではなく、ほぼネイティブの英語話者だったことで、そこで少しトレーニングできたのはよかった。でも、逆に言えばそこで自分の英語のできなさを痛感したので、今年は徹底的に英語を鍛えていきたいと思う。


つづく

2012/01/14

多数派・少数派

書くのをすごくためらっていたんだけど、まぁいっかと思って書くことにした。
去年、同じ専攻に留学生がほとんどいない中で勉強してるときにずっと思ってたこと。


まず、
privilegedな環境の中で、多数派で同質な人間同士が群れることの愚かさ。
(privilegedって言っても、正確には本人たちがprivilegedと過信してるだけだけど)

そういうところにいれば、エラそうな議論をし、自分の意見は受け入れられ、前提や価値観を共有でき、とても心地よい。でも、少数派異分子という立場からそういう集団を見て、それでホントに大丈夫なんだろうか?って思った。
言ってしまえば、自分の考え方がフランス人学生たちにことごとく受け入れられなかったことに対するエゴな反感にすぎないのだけれども、そういうとこでぬくぬくしていたら、どんどん違った考え方を受け入れることができなくなってくんじゃないか?って思った。
そして、そういうとこにいる人間が、官僚とか経営者とかになって、社会のマイノリティや、非熟練労働者として働く人間の気持ちがわかるんだろうかと。閉塞感を打破するような革新的なアイデアを思いついたり、進展するグローバル化の中で国際人としてやっていけるのかと。

これは別にフランス人の学生を批判したいわけではなくて、問題はむしろこれが僕に思いっきり当てはまるということ。東大にいて、価値観の合う友達と、国のために××したいとか、語り合うことに満足して・・・。自分ってなんてダサいんだろうかと思った。


一方で、少数派としての自分の至らなさも痛感した。
こっちの学校でいっぱい知り合いはできたけど、その中でもしょっちゅう連絡をとったり遊んだりして仲良くしてる友達の多くは留学生(スペイン人・中国人・イギリス人・イタリア人etc.)。もちろん、フランス人で仲いい子もいるが、周りにいた人数や常に仏語を話してることを考えると、想像してたよりはるかに少ない。

たしかに、フランス人の方が仲良くなりづらかったのは、彼らが群れていたというのもある。実際、フランス人同士でもEcole Polytechniqueから来た学生(約4割)と、もとからENPCの学生(5割強)との間ですら混じらないというのも事実。

でも、本質的な問題は、僕には相手の文化や習慣を理解しようとする姿勢が欠けてたということ。
(学部生ほど若くなく)大学院生としてきたのだから、必ずしもこっちの文化に過度に同化せずに、自分がいいと思うところだけ吸収して、悪いと思うところはマネしないでおこうと強く思ってきた。でも、その考えに逃げ道を見出してた。たとえば、困ってる人を助けないのはフランスの文化の悪いところなんだと捉えて思考停止してた。彼らは個人的な関係を築けばめちゃくちゃ親切にしてくれるし、そもそも個人的な関係を築くためには、どんどん腹を割ってというか、自分の思ってることをガンガン積極的に話してく必要がある。

そういうのを棚に上げて、相手のせいにしてたと思う。
ちょっと自分はこれに気づくのに時間がかかり過ぎたのかもしれないけど、少なくとも今は相手のことを知ろう・理解しようという気持ちを持って接することで、フランス人はじめいろんな人と話すのが格段に楽しくなった。


まぁ、どっちの視点で見ても、自分の改善すべき点は明らかなのであって、
もっといろんな人と交わり、いろんな価値観に触れたいと思う次第であります。